「誕生日はいくつになっても素晴らしい」
今週の『月光条例』は、あのページを開いた瞬間総毛立った。
禁じ手というか、面白いものを作るためには自分の身を削ることもいとわない、という藤田先生の覚悟が伝わってきた感じ。
よりによってねー。「あのシーン」をチョイスするなんてねえ。
驚かせるだけなら、別のシーンで良いわけですよ。
でも、「物語が失われる」ことの恐ろしさを描くために、おそらくは藤田先生自身が気に入っているのを選んだんじゃないかと。
ぜひともサンデー本誌で読んでもらいたいけど、何も知らずにコミックスで読んだ場合の感情も味わってみたかった(笑
『相棒 SEASON11』
「BIRTHDAY」(古沢 良太 / 橋本 一)
ある日の夕方、12歳の誕生日を迎えた少年、隼人は友達の誘いを断り、ある場所へ向かっていた。
その日の夜、杉下と甲斐は家出少女を自宅へ送っていた。その帰り道、杉下の目に飛び込む不自然な一軒家。
ふたりが調査を進めていくうちに、ある事件が起こっていたことが判明していく……。
まぎれもなく名作。
最初に時系列が行ったり来たりする展開を見たときは「単に奇をてらっただけでなければいいけど」なんて思ったのが、本当に申し訳ないです。
見せ方として上手いのが、隼人の描き方。
物語はつねに「隼人のことを考える誰か」という視点になっていて、明らかに隼人が中心なのですが、隼人自身の気持ちはクライマックスまで描写していないんです。
両親や隼人を拉致した男・大場の言動を通して、隼人の人物像が伝わるようになってくる。
監督の腕がいいんでしょうね。
最初のシーンで、隼人が走っていく先がまぶしくて風景が見えなくなっているのも、いろんなメッセージが込められていたと思います。
(光=隼人にとって希望の象徴、見えない=何か予定外のことが起こる予兆 という印象)
もうひとつ、これは見終わってから気づいたのですが、今回の裏テーマは震災だったのかなと。
震災から2年後、2日遅れではありますがこの日にこの話を持ってきたのは偶然じゃないと思います。
隼人の無事を神に祈る両親、仏に祈る隼人のコーチ、大場の死を悼む彼の彼女は、そのまま震災直後の被災者の姿だったのではないでしょうか。
そして今日の日記のタイトルにもした、物語のテーマとも言えるあの台詞。
1時間ドラマとは思えない、実に濃密な時間を過ごさせてもらいました。本当に感謝。