石持浅海『君が護りたい人は』
男は一人の女性を救うため、殺人を決意した。
犯行の現場はキャンプ場。事故に見せかけるため、男は周到な計画を立てていた。
しかし、そのキャンプには碓氷優佳が参加していた——。
はい、もうこのくだりで、シリーズ読者は「あ、もう終わったな」となることでしょう(笑
普通に章の途中で、キャンプに参加するメンバーの中に優佳がいたことがわかるシーンは、深夜の病棟に女性の幽霊が出てくるような、背筋にひんやりする感覚を味わいました。
一方で、いわゆる倒錯ものの醍醐味である「犯人と探偵の緊張感ある鍔迫り合い」はあまり味わえず。
多分これは、碓氷優佳シリーズの読者だと多かれ少なかれ、似たような感想に終わってしまうのではないかと思います。
あまりにも優佳が優秀すぎるんですよね。
対策として、本作はあまり優佳が表に出てくるシーンがないのですが、逆に数少ない優佳のシーンは「あ、これは何か仕掛けたな」とどうしても感じてしまうし、出番が少ないから優佳の魅力もあんまり描写されないという、どうにももどかしい感じに。
そういう意味では、シリーズの読者よりも、今作を始めて読んだ人の方が楽しめるんじゃないかと思います。
優佳が負けたり苦戦したりするのも読みたくないし、あと1、2作でシリーズ完結するのもありかもなあ、などと、優秀すぎる探偵の扱いの難しさを感じる一冊でした。