備忘録(仮のような正式タイトルのような

基本放置の備忘録。2013年2月25日開設。Twitterもやっています。@tatibana_m

舞台って難しい。

フェアリーテイルアレゴリー

 

見終わった最初に抱いた感想が

「この役者陣で、違う舞台を見たいなー」

だったのがすべてかなぁ(^ ^;

 

結構キツいこと書いています。これから観る予定のかたは回避したほうがいいかも。

本当はネガティブなことはブログに書きたくないのですが、自分が何か作るときの心がけにもなりそうなので記録して残しておきます。

 

あ、役者の演技は良かったですよー。生の役者が見たい、舞台で演技をする声優が見たいという理由なら……というところ。

双子役だった下屋さん、いのくちさんは言うまでもなく、清水さん、後藤さんも交えた会話劇は早めのテンポだったのに聞き取りやすく(ときおり声が重なって聞き辛いタイミングもありましたが)、小清水さんの怒、哀の演技は圧巻の一言。

個人的には小清水さんの演技が観られたのが、今日最大の収穫でした。スタイルもいいし、今後も舞台を続けてほしいなあ。

広橋さんについては「どんな人物をどう演じるんだろう?」と興味津々だったのですが、まさかクマ役だったとは(笑

「あれぐらいエキセントリックな役だと演じやすいだろうなあ」と思ってしまったのはご愛嬌ということで。

 

 

役者は総じてプラスでしたけど、シナリオは総じて残念でした。

そしてそれが致命的でした。

 

脚本が良くても名作になるとは限らないけど、脚本が悪いとほかの何が良くても駄作になってしまう。

それが痛感できたのは、ある意味収穫だったのかも。

 

大抵のことは、「ああ、シナリオが上がるのが遅かったんだな」で納得しちゃうのですが、脚本家に声を大にして言いたいことが一つ。

作品に原発や放射能を盛り込むなら、責任をもって描け

脚本家が原発の事故、放射能汚染を嫌っているのはよーく伝わってきました。

だけどそれを役者に言わせるだけで終わらせるのは、卑怯きわまりないことだと思います。

 

物語の整合性もムチャクチャ。パンフを読むと再演らしいのだけど、30分のものにアレコレくっつけた結果なんだろうなあ。

以下にあらすじを掲載します。

 

動物たちが多く生きる、小さな王国。

その国王が病に冒され、王位を継承すべく4人の娘を城へ呼び戻す。

呼び戻された4人と、ずっと国に残っていた5女の「ユキ」。

さらに、5人は知らなかったことだが、国王にはもうひとり娘がいた。

じいやたちに6人目の娘について話している最中、彼らの前に姿を見せたひとりの少女。

国王たちは彼女を6人目の「ヒカル」だと思い込んだのだが、実は彼女は、国王やユキが可愛がっていたクマの「ヨーコ」が謎の力で人間に変身したものだった。

やがて、国が財政難に陥っていることを知った娘達は、国に人を呼び込むためにミュージカルを公演することを思いつくのだが、そこへ本物のヒカルがやってくる。

しかもユキが病に倒れ、病院へ運ぼうとするものの、大雪で車が出せない。

それを知ったヨーコはクマの姿に戻り、ユキを病院へ連れて行くものの、その帰りにヨーコが脱走したと勘違いしたハンターに撃たれてしまう。

さらに、ヨーコを追いかけた国王もハンターに撃たれるのだった。

死にゆくヨーコと国王の前に、妖精が姿を見せ、「願いを叶えてやる、その代わり対価が必要だ」と語る。

ヨーコの願いは「ユキの病を治してほしい」というもの。妖精は対価として、ヨーコが二度と人間になれないと告げる。

国王の願いは妖精以外の誰も聞くことができず、やがて国王とヨーコは眠りにつく。

そして、ミュージカルの幕が開き、そこには元気になったユキの姿が……。

END

 

ハッキリ言ってかなり優しくまとめていますが、それでもツッコミどころが多いです(^ ^;

構成もちょっとなー、ほとんど推敲していないんだろうって思うぐらいチグハグ。

オリジナルストーリーなのだから、どんな世界観か、どんな話(テーマが何か)を早めに説明しなきゃ見ている方は舞台に没頭できないのに、序盤はずーっと姉妹ゲンカばっかり。

そもそも何をテーマにしたかったのだろう?

「ミュージカルをやろう!」となる直前に、姉妹が歌やダンスが得意という話が出てくるのも、最初の登場直後に語らせておけばいいのに……と思ったし、

本物のヒカルが出てきてから、国王がヒカルの母に会わなかった理由とかヒカル以外の娘が実は養子だったとか言われても、感動より先に「それ、今語らないといけないこと?」とツッコミがきちゃいました(^ ^; だって、ユキが命の危機の場面で言われてもねえ……。

終わり方も、ミュージカルで〆はないと思います。いや、ミュージカルの〆という形自体はいいのですが、テーマが語られていないから「何をもってこの物語を終わりとするか」がわからないまま勝手に幕を閉じられても……と言うべきでしょうか。

最後のナレーションのあと、客の「え、これで終わり?」という空気を感じてほしかったですよ、本当(^ ^;

 

国王とお姫様たち、という設定の話なのに「お父様」でなく「お父さん」なのも気になったし、動物たちの面倒を見ているのが「従業員」なのも作り込みが甘いなぁ……と舞台を見ながらこっそりツッコミ。

 

舞台がサーカスならもう少しまとまったんじゃないかと思うのだけど、国王やユキの病気の原因を放射能にするためだけに国の設定にしたのだとしたらイヤだなあ。

 

僕はゼロから何かを作り出すことの難しさを(それなりに)知っているし、自分がそれを仕切れないと実感しているから、「俺の方が面白い物語を書ける」とは絶対に言わないけど、そんな僕でも「この物語はない」と言わずにはいられない。

映画のように予告編がない分、客は「きっと支払ったお金に値する面白さがあるはず」と、いわば信頼してチケット代を前払いしているわけで。

その信頼に応えていかないと、舞台から人が遠ざかっていくだろうなあと危機を覚える一作でした。